<歌詞和訳&歌詞解釈>Tutti Frutti / New Order

tuttifruttiNew Order

歌詞の和訳

なんか最近おかしいんだよ
どうすればいいのかわからない
これって僕の人生? ほんとは違う? 
それとも全部気のせい?
何かが必要なのかな? 情熱? それとも欲望?
たくさん詰め込まれ過ぎてて目が眩んじゃうよ
ほんとなんか変なんだ、ちっともうまくいかない

君は僕が傷ついたときだけ来てくれるんだね
でも全然気にしてないよ
君がいれば大丈夫になるのがわかってるから
僕が行きたいところへ連れてってくれるし
落ち込んでる時はいつも元気にしてくれる
僕はまるで君の手のなかの紙っぺらみたいだね
くしゃくしゃにされたってかまわないよ
でも君のことは絶対に手放さない
僕の大好きなトゥッティフルッティなんだから

前に穏やかな風景がいっぱいの綺麗な夢を見たんだけど
あの夢はどんな意味があったのかな?
もしかして愛なのかな?
そう、僕はきっと君の愛が欲しいんだよ
僕らは宇宙で誰かを見つけようとして
自分自身を見失ってしまったんだ
僕らの世界は恵まれてる
頭がいいやつが得する仕組みになってるんだ
まあ僕はついていけないけどね
沈んでく太陽みたいな気分だ
僕の目はもう燃え尽きそうになってるんだ
僕が正気でいるために君が必要なんだよ

君は僕が傷ついたときだけ来てくれるんだね
でも全然気にしてないよ
君がいれば大丈夫になるのがわかってるから
僕が行きたいところへ連れてってくれるし
落ち込んでる時はいつも元気にしてくれる
僕はまるで君の手のなかの紙っぺらみたいだ
くしゃくしゃにされたってかまわないよ
でも君のことは絶対に手放さない
僕の大好きなトゥッティフルッティなんだから

歌詞の解釈

 トゥッティ・フルッティとは砂糖漬けにした果物、またはそれを細かく刻んだお菓子です。数種類の果物を使うため色彩が豊かで見た目が楽しい食べ物です。その楽しげなイメージがポップな曲調とマッチして、聴いていて楽しい気分になるこの曲ですが、一体どんなことを言っているのでしょうか。
 考えていきたいと思います。

Life is so crazy these days
I don’t know how to adjust
Are we the master or slave?
Do we need passion or lust?

 「なんか最近おかしい」

 ポップな曲調とは裏腹にそんな調子で始まります。主人公はひどく気が滅入っている様子です。まるで自分が自分ではないような気持ち、他人の人生を生きているような感じでしょうか。たとえば20年間ワイシャツとスーツを着て過ごしてきたのに、最近はハードエッジな黒革のライダースジャケットの着用を求められて困ってるみたいな。(例え下手。すみません)

 それでも情熱と欲があればやっていけるのかな、と主人公は思い悩みます。

Are we just caught in the days
So many words in a phrase
Life is so crazy these days
Life is so crazy these days

 自分を取り巻く周囲の状況に、主人公が追いつけなくなっている印象です。

「たくさん詰め込まれ過ぎだよ」

 ひっきりなしに入ってくる情報をきちんと処理できない自分に困惑しています。例えるなら、車酔いしたときに見る車窓の風景といった感じでしょうか。流れていく景色は目に映っているんだけど、気分が悪くてなにを見ているのか頭に入ってこない。

 ・・・わかりにくいですかね。
 
私が言いたいことはとにかく
「目が回りそう!」ってことです。

You’ve got me where it hurts
But I don’t really care
‘Cause I know I’m OK
Whenever you are there


 主人公の心が何かに傷つけられたときにYOUが助けにきてくれます。君がいれば僕は大丈夫なんだ、と言うほど主人公はYOUのことを信頼しています。

 ではそのYOUとはいったい誰なのでしょうか?

 そうです、YOUとはトゥッティ・フルッティのことなのです。

You take me to a place
I always wanna go
You always make me high
Whenever I feel low
I’m paper in your hand
I’m under your command
And I’ll never let you go
‘Cause you’re that girl
Tutti Frutti

 トゥッティ・フルッティを食べることで主人公の落ち込んだ気分が晴れていきます。そして、もう絶対君を手放せないよ、と女の子に向かって言うのです。その女の子こそがトゥッティ・フルッティを擬人化した存在なのです。

 一種の依存状態ですから、酒やクスリの暗喩という解釈もできるとは思います。ただ、それだとあまりに安直かなと私は思います。

I had a beautiful dream
For a picture so serene
But I don’t know what it means – love
I just want your love

 美しい夢を見たことをきっかけに、主人公は、いま自分に向けられている愛がどこにもないことに気がつきます。もともとなかったのか、以前はあったが失ってしまったのかはわかりません。ただ、このあとの迷子うんぬんというくだりを考えると、結局愛をくれるような存在には出会うことができなかった・・・とも考えてしまいます。

 いずれにしろ、主人公は今、擬人化したトゥッティ・フルッティに愛(救い)を求めているのです

Generations lost in space
Trying to find the human race
We’re living in a state of grace
Where every scholar means a dollar
And sometimes I just can’t go on

 相手を探したけど結局見つからず、さらには迷子になってしまったんだと嘆きます。ここで強調したいのは、自分(たちの世代)がいかに不器用に生きてきたかということです。その不器用さを踏まえたうえで、最近なんだかおかしいと感じていた理由を明らかにしていくのです、大きな皮肉をこめて。

 世の中はいつの間にか頭のいい人間だけが得をする仕組みに変えられてしまっていたと主人公は考えています。しかも悪いことに、その頭のよさは本物ではなく見せかけなのです。彼らは簡単なことをいかにも難しそうに見せて相手を煙に巻く技術に長けているだけです。言い換えればただ器用なだけです。

 主人公は冒頭でつぶやきました。

「(いらないものが)たくさん詰め込まれ過ぎだよ」

 余計なものがたくさんあるせいで、本当に必要なものが見えなくなっています。これが「なんか最近おかしい」と主人公が感じる理由なのです。

I feel like I’m a setting sun
I know my eyes are burning bright
I just need you to make it right

 主人公は、現状に反発する情熱が自分の中にないことを悟り、「なんか最近おかしい」と感じる現実を受け入れていこうと覚悟します。そんな状況でも、トゥッティフルッティがあれば主人公は正気を保っていくことができるのです。

TuttiFrutti

 では、結局トゥッティ・フルッティとは何を意味しているのでしょうか?

 「変わらないもの」の象徴だと私は思います。この主人公にとって、昔から唯一変わらず信じられるものがトゥッティフルッティだったということです。

 年齢とともにだんだんと周囲の速度についていけなくなっていきます。若い頃にあった根拠があやふやな自信はとうに消え失せ、情熱も欲望もなくなりつつあります。器用に立ち回る人間が得をする世の中。その中で生きる不器用な自分。誰からも愛されていない自分。


 そんな状況から、主人公は自分の存在意義がぐらつき、自分自身を信じることが難しくなっていきます。そして無慈悲に流れていく周りの風景を見て、主人公はこう思うのです。

「・・・僕ってどういう人間なんだっけ?」

 いくら考えても自分がどんな人間なのかわからず途方に暮れます。
 でもそこでふと思い当たるわけです。

「待てよ、僕はトゥッティ・フルッティが好きだ。これは子供の頃からずっと変わってない」

 確たるものの存在を思い出し、同時に主人公は喪失していたアイデンティティを取り戻します。精神の危機から生還するのです。

 私の解釈は、トゥッティフルッティのおかげで「中年の危機」に沈み込まずにすんだ男の物語ということになります。(中年の危機でなくてもかまわないです。聴き手の年代によって精神危機の呼び名は変わろうかと思います。私自身が中年なのでそう解釈するのが一番しっくりくると思っているだけです)

 人それぞれ確たるものは違います。仕事や家庭はもちろんのことですが、人によってはサッカーをすることだったり、もしくはサッカーを観ることだったり、ワインの知識を蓄えることだったり、記念硬貨を集めることだったり、ウクレレを演奏する技術だったり、三国志を読了したことだったり、またはプラモデルを精巧につくることだったりします。まさに千差万別です。

 いつか心が蝕まれるような危機がやってきたとき、そういった存在があなたを救ってくれるかもしれない。もしかしたら、あなたがあなた自身であることを思い出させてくれるかもしれない。この曲はそんなことを言っているのです。

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