<歌詞和訳&歌詞解釈>Evidence / Faith No More

evidence和訳と解釈

歌詞の和訳

もし抜け道をつくりたいなら
頭を低くして状況をしっかりと確かめるんだ
そして証拠を全部洗い流さなくちゃいけない

洗い流すんだ(証拠を)

俺は何も感じなかった
それは何も意味をなさなかったんだ
じっと目を見て証言する
でも俺は何も感じなかっんだ

何を言おうが、おまえが犯人だってわかってる
頭の上に手を挙げたところで、俺を感じることはできない
証拠を感じることはできない

歌詞の解釈

 「証拠」という変わったタイトルの曲で、ジャズのムードが漂うとても色気がある曲です。ただ、歌詞はとても抽象的かつ断片的で、正直なところ何を言ってるのかわからないので非常にストレスが溜まります。


 なぜこんなにわからないのか? 

 その理由はバラバラの人称にあります。センテンスごとに使われている人称が違うのです。さっきまで二人称だった人物がセンテンスが変わると一人称になり、まったく別の人物が一人称になっていたりします。つまり「あなた」だった人が、次のセンテンスでは「俺」に変わっているのです。
 もちろん作り手は意図的にそうしていて、意味に含みをもたせたり、ぼかしの効果を狙っているんだと思われますが、このせいで聴き手の頭はこんがらがるわけです。

 このことを踏まえて、何が語られてるか考えてみたいと思います。
 (
人称については各センテンスごとに注釈をいれました

If you want to open the hole
Just put your head down and go
Step beside the piece of the circumstance
Got to wash away the taste of evidence

Wash it away
( evidence)

 曲は、主人公が何らかの罪を犯したらしいところから始まります。

 何の罪かはわかりません。しかし犯した罪が何であれ、罪を償うつもりはまったくないように思われます。なんとかして罰を逃れようと冷静に立ち振る舞っているからです。主人公は、頭を低くかまえ、目を皿のようにして、自分が犯人である証拠を探して消していきます。入念に、ひとつ残らず。もしかしたら多少の罪悪感はあるのかもしれませんがそこまでは読み取れません。

 ・・・主人公が犯した罪が気になるところです。

  *youは主人公(正しくは、主人公が自分の経験をもとに不特定のyouにアドバイスを送っているかたちをとっています。ただ実際に罪を犯したのは主人公なのでここではyouを主人公とします)

I didn’t feel a thing
It didn’t mean a thing
Look in the eye and testify
I didn’t feel a thing

 場面は変わります。

 問いただされ、罪を追求されますが、主人公はまったく動じずにやり過ごします。それどころか相手の目をじっと見つめ、嘘の証言をするのです。無感情で、機械的に、事前に考えたシナリオどおりに。

 主人公がそうできるのは、自分の犯行を証明する証拠がもうどこにもないからです。かつて証拠だったものは、自身の手ですでに洗い流されて意味のないものに変容してしまっているのです。

 * Iは主人公 

Anything you say and we know you’re guilty
Hands above your head, you won’t even feel me
You won’t feel me

 主人公が何を言おう(証言しよう)と、誰もが主人公の犯行だと思っています。

 ただ、証拠がないのです。

 手を振り上げて無理やり口を割らせようとしても、誰も主人公に本当のことを吐かせることはできないし、洗い流されてしまった証拠を見つける(感じる)ことができないのです。

 * 1文目のyouは主人公、weは不特定多数な誰か
   2,3文目のyouは主人公以外の人物、meは主人公


 この曲は、証拠を完全に隠滅し、完全犯罪を成し遂げた人物の物語だったわけです。こうなるとやはり気になってくるのがその罪の内容です。

 主人公はいったい何の罪を犯したんでしょうか?


 それはずばり殺人です。そう考える理由はふたつあります。

 ひとつめは証拠を「洗い流す」と表現していることです。通常、証拠は隠蔽したり隠滅するものですから、「洗い流す」は一種の換喩表現だと考えられます。
 つまり、そう表現するからには水で流せる種類のものであり、示唆しているのは、つまり「」ということになります。(詞中の表現ですので、実際に血痕を水で洗い流すと言っているわけではないです。あくまで現場で血が流れたということを示唆しているということです。具体的な作業は、きっと指紋を拭き取ったり、物証の廃棄だったりと自分が現場にいたことを証明する事柄の隠滅でしょう)

 ふたつめの理由は、ひとつめの理由を考えれば言わずもがなです。「血」が流れた犯罪ですから必ず相手がいます。そして、もしその相手が死んでいないなら、主人公は証拠をすべて消し去ることができないのです。傷つけた相手自身がぺちゃくちゃ喋る「証拠」になってしますから。

 以上の理由により主人公は相手を殺したということになるのです。


 この詞が実際の事件を下書きにしているのかどうかはわかりません。時期的にはOJシンプソンの事件でアメリカ中が盛りあがっていた頃と重なってるようにも思いますが、まあなんとも・・・。

 ちなみに私はこのOJ事件の当時学生だったんですが、私の前の席に座っていた羽田くんが突然振り返り、「OJシンプソン無罪だってよ!」と半ば怒り顔で話しかけてきたことを今だに覚えてます。「おぉ、信じられないよな」と絞り出すように何とか返答したのですが、それまで彼とほとんど話をしたことがなかった事実を考えると、なぜ彼が突然その話を私にしてきたのかは謎です(・・・あれなんだったんだろう)。
 個人的な謎は今だに残っていますが、私が言いたいのは、学校の教室で話題になるくらい当時の日本でもそれなりに関心が持たれていたということです。

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