<歌詞和訳&歌詞解釈>Crystal / New Order

crystalNew Order

歌詞の和訳

僕たちはクリスタルみたいだ
だって簡単に壊れちゃうだろ
君がいなくなったら僕はみじめなもんだよ
気に入られてても、そのあと忘れられちゃうんだから
ついさっきまで夏だったのに、いつのまにか秋になってたって感じなんだろうな、きっと
(ふぅ)

何て言えばいいのかわからないけど
僕が何か言ったってどのみち気にしないだろ
がっかりさせてしまったことは悪かったよ
(どうすればよかったのか教えてよ)
さあやってくる、甘ったるいハチミツみたいな愛だ、お金じゃ買えないよ
もうこれで君はひとりぼっちじゃない
(僕と一緒のときはいつでもね)
君は僕を揺さぶってくれるよ、ほんと
僕の存在を思いっきりとさ

僕らはクリスタルみたいだ
君の愛をもらうのはそんな簡単じゃない
でもそれがあれば僕は生きていけるんだ
誰だって誰かが必要だろ
だからおいで、僕と一緒に楽しもうよ
こっちにおいで、僕と一緒に歌おうよ
一緒にいようよ

何て言えばいいのかわからないけど
僕が何か言ったってどのみち気にしないだろ
がっかりさせてしまったことは悪かったよ
(どうすればよかったのか教えてよ)
さあやってくる、甘ったるいハチミツみたいな愛だ、お金じゃ買えない
もうこれで君はひとりぼっちじゃない
(僕と一緒のときはいつでもね)
君は僕を揺さぶってくれるよ、ほんと
僕の存在を思いっきりとさ

だからおいで、僕と一緒に楽しもう
こっちにおいで、僕と一緒に踊ろう
おいでよ、僕と一緒にいようよ

歌詞の解釈

 ギターがジャカジャカと小気味よく鳴り「僕たちはクリスタルみたいだ」と高らかに宣言して始まるこの曲ですが、いったいクリスタルとは何でしょうか。意味を考えてみたいと思います。

We’re like crystal
we break easy
I’m a poor man

if you leave me
I’m applauded

then forgotten
It was summer

now it’s autumn

 何がクリスタルなのか?

 答えはすぐに分かります。僕たちはとにかく壊れやすいのです。キラキラ輝いていてこのうえなく綺麗で美しいんだけれど、もろくて簡単に壊れてしまう関係なのです。なんか切ないんです。

 そんな僕たちとはどんな関係なんでしょうか?

 恋人? 友達? 家族? それとも仕事仲間?

 ある時は称賛されているけれども、そのあとには忘れられちゃうと言っていますから、家族ではなさそうです。同じ理由で、きっと恋人や友達でもないと思います。だってたとえ相手のことを嫌いになったとしても、かつて賞賛するほど好きだった相手をすぐには忘れないですから、ふつうは。
 仕事仲間は、関係性が希薄であることが多いでしょうからあり得そうです。ただ、一緒にスタートアップしたぜというような熱い仕事仲間のことなら歌にもなりそうですが(そもそもそんな相手は関係が希薄ではなさそうですが)、関係がそれほどでもない相手のことを歌にしてもつまらなそうです。

 では一体誰と誰の関係?

 私は歌い手と聴き手の関係のことだと思います。具体的に言ってしまえば、ニューオーダーとファンです。この関係がクリスタルみたいに脆く、簡単に壊れてしまうのです。

I don’t know what to say
you don’t care anyway
I’m a man in a rage

(just tell me what I’ve got to do)
with a girl I betrayed
Here comes love

it’s like honey
You can’t buy it with money

you’re not alone anymore
(whenever you’re here with me)
You shock me to the core

you shock me to the core

 ここに出てくる女の子は不特定多数のファンを抽象化した存在です。
 歌い手は過去に気に入ってもらえる曲を作れなくて、ファンの期待を裏切ってしまったことを悔やんでいます。

 もっと妄想をたくましくすれば、長い間、活動停止状態になっていたけれど(*1)、その間ずっと待っていてくれたファンに対して申し訳なく思っているのかもしれません。
 さらにさらにもっと妄想をたくましくすれば、ジョイ・ディヴィジョン時代からのファンに向けて、前のバンドが不本意な終わり方(*2)をしてしまい、結果として裏切ってしまった過去を嘆いているのかもしれません。

 ・・・でも、歌い手は言います。愛がやってきたよ、と。

 言い換えればこういうことです。

 できたよ、新しい曲。だからこっちにきて一緒に楽しもうよ!

*1 Crystalが収録されているこのGet Readyは約8年ぶりに発表されたアルバムです。 
*2ニュー・オーダーの前身であるジョイ・ディヴィジョンは、イアン・カーティス(Vo)の自殺により解散を余儀なくされました。残されたメンバーで結成されたのがニュー・オーダーです。

We’re like crystal
it’s not easy
With your love
you could feed me
Every man
and every woman
Needs someone
So keep it coming
Keep it coming, keep it coming, keep it coming
Keep it coming, keep it coming, keep it coming
Keep it coming

 歌い手と聴き手はクリスタルみたいなもの。聴き手にずっとファンでいてもらうことは簡単じゃないのです。一度ヒットしても、次の曲をつくらなければいけないし、その曲もそのまた次につくる曲も聴き手の心に引っかかるものでなければ、ファンの心は次第に離れていき関係は壊れてしまいます。

 だから「君の愛があれば、君は僕を養うことができるんだよ」という言葉が出てくるわけです。つまり、(ちょっと生々しいですが)直接的には、君がファンでいてくれれば僕は生きていける、ということになり、間接的には、そうすれば僕はきっとまたいい曲をつくって君と楽しむことができるんだよ、ということになります。

 歌い手としては聴き手にずっとファンでいてほしい。壊れないクリスタルであってほしいのです。だから何度も繰り返して言うわけです。

 「みんな誰かが必要だろ。だからこっちにおいでよ、ほらこっちにおいで。こっちにおいでってば。僕のファンでいてよ、こっちにおいで・・・」
 「おい、こっちにこいよ」

アルバムジャケット

 私が初めて買ったニュー・オーダーのCDは、この曲が収録されているアルバム「Get Ready」です。なんとジャケ買いです(もう死語ですが)。

 当時、売り場でこのCDを見つけたとき、ジャケット写真に目が吸いついてしまったのを覚えています。掃除機で目線を吸引されてるような変な感覚でした。いっとき目線を外してもすぐにまた吸い寄せられてしまうのです。何とか引っ剥がしてその場を離れるのですが、店内を一周して同じ棚のまえに戻ってきたときにふたたび吸い寄せられてしまい諦めました(買いました)。

 どんなCDジャケットかは、このページの先頭にあるAppleMusicプレビューのサムネイルを見てもらうのが早いのですが、簡単に言えば、Tシャツジーンズ姿の女性がビデオカメラを構えてこちらを覗いているだけのモノクロ写真です。アルバムタイトルもバンド名すらないです。ただ、目を引くのは彼女の腰のあたりに引かれた、すこし朱色がかったオレンジの太いライン。このラインが不思議な力強さをもっているのです。

 のちにデザインがピーター・サヴィルという有名なグラフィックデザイナーによるものだと知り、なるほど有名なだけあるなとひとり感心するわけですが、目が吸いついて離れなくなってしまうほど気持ちいいのですから、素人ながら、あの背景の写真とオレンジラインは色も形も場所もきっと絶妙なんだと思っています。

 歌詞と同じく、このアルバムジャケットのデザインについても勝手な解釈をするならば、長年活動停止状態だったニュー・オーダーがモノクロになってしまった自分たちの世界から、こちら側の世界を覗き込んで、色だったり温度だったりの様子を伺っているように思えるのですが、さてどうでしょうか。

 ともあれ、このアルバムジャケットのおかげで私はニュー・オーダーと出会い、ここから時代をさかのぼって彼らの曲を聞いていくことができたわけですからありがたい話です。

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